プロダクトの本当の価値とは?
過信しないことで見えてくる
ユーザーエクスペリエンス
2018.5.31
国内トップクラスの配信速度を誇り、オンプレミスにもクラウドにも対応する柔軟さが特長の「BoltzEngine」 (ボルツエンジン)。
順調に導入数を増やしている BoltzEngine を支えているのは、徹底したユーザー目線。エンジンの性能だけではなく、明確な価格設定や斬新なビジュアル表現など、あらゆるアプローチからユーザーの満足度を高めているその裏側を、プロダクトオーナーの伊藤が語る。
前編:雷のように降り注ぐ情報 ── タイムラグのないプッシュ通知を目指して
あらためて見つめた自社プロダクトの適正価格
BoltzEngine の販売価格やプランについてお聞かせください
当初は1アプリにつき1ライセンスのプランのみだったんですが、バージョン2のときに、様々なシーンで使われることを想定して3つの料金プランをつくることにしました。
今後は「複数本のアプリをリリースするときにまとめて購入したい」という要望があがると予想していたので、ボリュームディスカウントのプランを追加したんです。
プランの見直しとともに、適正価格を算出する必要がありました。リリース当初は1本100万円という価格設定をしていたんですが、実はあまり深く考えずに設定したんです。それではお客様に説明するときにも納得いただけないと思って、BoltzEngine にいくらの価値があるのかをあらためて考えましたね。
具体的にはどのように算出したんでしょうか?
まず、自社の単価をベースに、実際にこのプロダクトをつくるのにどれくらいの日数がかかるのかを算出して、じゃあそれにいくらかかるのかというのを割り出しました。それで、開発にかかる費用の3分の1〜半分くらいの価格に決めたんです。
低い価格設定のようにも感じます
たしかに、もう少し価格を上げていいのではないかという意見もありました。でも、購入を検討していただく際に少しでも迷われる価格にはしたくなかったんです。
うちの社内に在籍しているエンジニアは優秀ではありますが、他の企業にも彼らのようなエンジニアはいると思うんです。そうなったときに、「内製できるなら買う必要がない」と思われると意味がないですからね。
だから「買ったほうが安い」と思われる価格設定にしています。
想定したプランの手ごたえはいかがでしたか
この業界ではこういう用途に使われるんだろうな、という想定はだいたい当たりましたね。ほとんどのお客様が無期限で買い取り型の Lightning プランか Thunderbolt プランを選ばれていますし、ボリュームディスカウントの需要はやっぱり高かったです。
ASP 化の代わりとしてつくった月極めの Flash プランは、需要はそこまで高くはないのですが実際に導入いただいているところもありますので、今後も様々な用途をカバーできるようなサービスを提供していきたいです。
サポート面についてはどのようなサービスを?
導入後は特に大きなトラブルもなく安定稼働し続ける、という使いやすさも BoltzEngine の強みなので、技術面でサポートをさせていただく頻度は正直少ないと思います。ですが、万が一のトラブルにはすぐに対応させていただきますし、サポートサービスにはソフトウェアのアップデートなども含まれています。そういったことを加味した価格設定にしていますので、お客様にもご満足いただけていますね。
価格面で目指した部分はクリアできましたか?
ちゃんと意味があり価値のある価格であることを目指していたので、そこは達成できたなと思います。内訳を聞かれたときに困るような価格設定にはしたくないというのがあったので。
導入いただいているお客様からは「この性能でこの価格は安い」と驚かれることが多いですが、まず性能がいいということで信頼いただいているのが大きいと思っています。実際、 1 つのプロダクトで導入いただいたうえで、また別のアプリでも導入いただけるということもあって、使い心地にも満足いただけていると感じています。
「定番」の脱却が生んだ、あたらしいビジュアル表現
BoltzEngine というネーミングは印象に残りますね
ありがとうございます。実はプロジェクト立ち上げ当初は「スターダスト」という名称だったんです。プロダクトのロゴも含めて“流れ星”をイメージしていたんですが、スピードを売りにするサービスにしてはちょとインパクトに欠けるなと。
ブラッシュアップしていくなかで、アートディレクターから「Boltz」(ボルツ)という案が出てきました。 Boltz は“稲妻”という意味なんですけど、「思いがけない知らせ」という意味もあって、このプロダクトにぴったりだと思いました。商標の問題があって「Engine」を付けましたが、今となっては BoltzEngine の方がしっくりきますね。
プロダクトサイトのビジュアルも斬新でした
そこはアートディレクターが強く意識していたところですね。アプリとかソフトウェアの B to B 向けの PR って、手にスマートフォンを持っているビジュアルが多いじゃないですか。「こういうアプリのビジュアルはこれ」という感じで定番化していて個性がないね、と話をしていました。BoltzEngine はそういうビジュアルにならないようにしたかったんです。
フェンリルは「デザインにこだわる」ということを理念にしているので、他社と同じようなビジュアルを打ち出すわけにはいかない、という気持ちもありました。
とにかく、“よくあるプッシュ通知のサービス”という風に捉えられるのを避けたかったんです。せっかく性能が良いのに平凡なビジュアルで埋もれてしまうのはもったいないですから。 なので、B to C の広告のような考え方でビジュアルをつくり込んでいけば、他社サービスとのビジュアルの差別化をはかれると思いました。
どのようにビジュアルに落とし込んでいったんですか?
先に Boltz というネーミングが決まっていたので、稲妻をキービジュアルにすることは自然な流れだったと思います。ビジュアルのことはアートディレクターに一任していましたけど、BoltzEngine の「超高速」を表現したいということはお願いしましたね。
それでイメージソースとして出てきたのが、「カタトゥンボ稲妻」でした。ベネズエラにあるマラカイボ湖に落ちる稲妻のことなのですが、年間で約260日、1日に4万もの雷が発生したこともあるほど、間髪いれずに雷が落ち続けるらしいんです。そういうインパクトのある状況は、高速プッシュ通知をあらわすのにぴったりだと思いました。
制作にあたって意識したことは何でしょうか
個性的なビジュアルをつくりたいというのはありましたが、プロダクトと会社の信頼性を損なうものにならないように注意していました。
たとえば複数の色を使ったり雷をすごくデフォルメして表現したり、そういうビジュアルは目を引くとは思いますが、買っていただく上での信頼性には欠けるのではないかと。
色んな雷や空の色でラフをつくってもらって、BoltzEngine を表現するもっとも良い方向性を探るなかで、青を基調にした 1 色ベースのビジュアルが出来上がりました。
信頼性とインパクトの両立したビジュアルに仕上がったと思います。
ビジュアルがお客様に与える影響をすごく考えているんですね
アートディレクターが細かいところにもこだわっていて、BoltzEngine の世界観をつくりあげてくれました。
たとえば、ご契約いただいたお客様にお渡ししている証書は銅版風のアレンジをして、大切にしていただけるデザインを意識しました。また、印刷されている雷のデザインはあえて手描きにして信頼感を高める工夫をするなど、妥協のないデザインになったと思います。
そういう風に、BoltzEngine のブランド価値を高めていくというミッションにビジュアル面で大きく貢献してくれています。エンジニアとデザイナーが社内に在籍しているので、プロダクトの本質を理解し合えるというのはフェンリルの強みですね。
より高いクオリティを追求していく
順調に顧客数が増えているなかで今後目指すことは
これからも信頼いただけるクオリティを提供するために、自分たちがどう思うかだけではなく、お客様がどう感じるかを意識しつづけたいですね。
エンジン自体のクオリティはもちろんですが、価格やビジュアル面においても、現状に満足せずに改善していくべきだと思います。
そのためには、プロダクトの価値を冷静に見極めて常に「より良いサービスとは何か」を考えていきたいです。
- Editing : Ai Takashima
- Photographs : Ikunori Moriwaki